はじめに
この記事は WHITEPLUS Advent Calendar 2023 の 12月21日の記事です。
こんにちは。株式会社ホワイトプラス、エンジニアの @n-black-cat です。
世間で色々と話題になっているインボイス制度がついに施行されましたね。
自分は会社員なので、この制度が始まっても「自分には関係ないや」と思っていました。
しかし、インボイス施行直前の9月に急遽業務で関わることになります・・・!
本記事では、弊社のインボイス制度施行に対して行った対応を共有したいと思います。
また、インボイス制度についても例を交えて解説します。
そもそもインボイス制度とは
<売手側>
- 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
- 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
- (※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
インボイスのルールとして以下のようなものがあります。
- インボイスを発行できるのは、登録をした適格請求書発行事業者のみ
- 免税事業者が登録を受けるためには、課税事業者となる必要がある
- 課税事業者の買手側からインボイスの交付を求められた場合、売手側の適格請求書発行事業者は交付しなければならない
- 交付したインボイスの写しは保存しなくてはならない
- 買手側はインボイスを保存しないと、取引で支払った消費税について原則、仕入税額控除が受けられない
これだけだとよくわかりませんね。
エンジニアには身近な業務委託の例を用いて説明します。
例:業務委託を依頼した時の消費税
- 売手(サービス提供者): Aさん(適格請求書発行事業者、つまりインボイス登録している人)
- 買手(依頼者): Bさん
- 消費者: Cさん(最終的な商品の消費者)
BさんからAさんへの依頼:
- BさんはAさんにシステム開発を税込み10,000円で依頼します。
- この10,000円のうち1,000円は消費税です。Aさんは適格請求書発行事業者なので、この1,000円を国に納税します。
BさんからCさんへの販売:
- BさんはAさんによって開発されたシステムを使用して、Cさんに商品を税込み20,000円で販売します。
- この20,000円のうち2,000円が消費税です。Bさんはこの2,000円をCさんから受け取ります。
消費税の調整:
- BさんはAさんへの支払いで1,000円の消費税を既に支払っています。
- Bさんは仕入税額控除を利用し、Cさんから受け取った2,000円の消費税のうち1,000円を控除します。
- 結果として、Bさんは残りの1,000円を消費税として納税します。
この例では、最終的な消費税の負担はCさん(最終消費者)にあり、Bさんは事前に支払った消費税と受け取った消費税の差額を納税することになります。
Bさんは税金を多く払いたくない正確に納税したいのでどうしてもインボイスが欲しい訳ですね。
もしAさんが免税事業者(適格請求書発行事業者じゃない)だったら・・・?
例:業務委託を依頼した時の消費税
- 売手(サービス提供者): Aさん(免税事業者)
- 買手(依頼者): Bさん
- 消費者: Cさん(最終的な商品の消費者)
取引の流れ:
BさんからAさんへの依頼:
- BさんはAさんにシステム開発を10,000円で依頼します。Aさんは免税事業者なので、この取引には消費税がかかりません。したがって、Bさんは消費税を支払わずに、システム開発の代金のみをAさんに支払います。
BさんからCさんへの販売:
- BさんはAさんによって開発されたシステムを使用して、Cさんに商品を税込み20,000円で販売します。
- この20,000円のうち2,000円が消費税です。Bさんはこの2,000円をCさんから受け取ります。
消費税の調整:
- BさんはAさんへの支払いで消費税を支払っていません(Aさんは免税事業者であるため)。
- そのため、BさんはCさんから受け取った2,000円の消費税全額を納税する必要があります。
この例では、BさんはAさんに支払った代金に消費税が含まれていないため、Cさんから受け取った消費税2,000円を全額納税することになります。最終的に消費税の負担はCさん(最終消費者)にあります。
インボイス制度の下での各事業者の負担の変化を整理すると、次のようになります。
- Aさん(適格請求書発行事業者)の場合:Aさんの負担は消費税1,000円増加します。これはAさんが消費税を国に納税する必要があるためです。
- Aさん(免税事業者)の場合:Bさんの負担が1,000円増加します。これはBさんがAさんに支払った際に消費税を支払わないため、後に全額を納税する必要があるからです。
- Cさん(消費者)には影響がありません。消費税の最終的な負担は常に最終消費者にあります。
インボイス制度によって生じる問題点を考えると、Bさん(事業者)は適格請求書発行事業者以外との取引を避ける傾向があります。
一方、年間売上が1,000万円未満のAさんのような小規模事業者は、適格請求書発行事業者になることで消費税を納める必要が生じるため、適格請求書発行事業者になることを望まないことが多いです。 ※年間売上が1,000万円以上の場合、事業者は適格請求書発行事業者(課税事業者)になるため、この制度の影響を受けません。
このように、インボイス制度は特に中小規模の事業者に影響を与え、その結果として市場の取引構造にも影響を及ぼす可能性があります。
ちなみにインボイス制度施行前は、
Aさんが免税事業者でもBさんは仕入税額控除を使用することができた
のでお互いにHappy happy happyでした。
↑これはHappy happy happy cat
インボイス制度の目的は、税の透明性を高め、正確な税収を確保することにありますが、一部の事業者にとっては負担の増加や取引の選択に影響を与えることになってしまいました・・・。
前置きが長くなってしまいましたが、弊社はお客様から消費税を受け取っている立場なので、インボイス制度のルールに沿った計算方法で税額を計算して請求し、適切な適格請求書を発行する義務があります。
問題の発生
ホワイトプラスでは主に4つのサービスを運営しています。
衣類のクリーニングサービス
衣類保管サービス
布団のクリーニングサービス
靴のクリーニングサービス
制度の施行が近づくにつれて自社のサービス料金計算がインボイス制度に適合しているかどうかを調べる必要が出てきて、それぞれのサービスの料金計算の処理を調査したところ、一部のサービスでは適合していないことが判明しました。
他にも、料金明細を記載するメールと領収書をインボイス制度に則った形式にする必要がありこちらの対応も行いました。
料金計算
各商品の税抜き価格を合計してからその合計に対して消費税率を適用させます。 以下に具体的な計算方法を説明します。
例として、3つの異なる商品があり、それぞれの税抜き価格が以下の場合:
- 商品1: 1,000円
- 商品2: 2,000円
- 商品3: 3,000円
計算手順:
各商品の税抜き価格の合計を求める:
- 合計 = 商品1の価格 + 商品2の価格 + 商品3の価格
- 合計 = 1,000円 + 2,000円 + 3,000円 = 6,000円
合計額に消費税率を適用する:
- 消費税率を10%と仮定します。
- 消費税 = 合計額 × 消費税率
- 消費税 = 6,000円 × 10% = 600円
最終的な税込み価格を求める:
- 税込み合計価格 = 税抜き合計額 + 消費税
- 税込み合計価格 = 6,000円 + 600円 = 6,600円
弊社の一部サービスでは各商品の税込を合計したものと税抜を合計したものを計算し、 税込価格 - 税抜価格をして消費税を計算していました。 この方法だと1円の誤差が発生してしまう可能性があり、
- 消費税を多く取り過ぎてしまう
- 消費税が少なくなってしまう
というリスクがありました。
料金明細メール
リネットでは、クリーニングした洋服を工場からお客様に発送する時に、確定した料金明細を送付しています。
以下の対応で、お客様が領収書を別途発行しなくてもメールを適格請求書として保存することができるようになりました。
- インボイス登録番号の表示
- 消費税率の記載
- 税抜金額と消費税額 or 税込合計金額と消費税額 いずれかの表示
- 消費税の計算は1つの請求書につき1回「税込」は合計金額に対してのみ記載する
領収書
上記の料金明細メールでも、適格請求書として機能はしていますがユーザー様によっては別途、領収書で欲しいという声が上がりました。
以前から領収書発行機能はついていますが、従来の形式だと適格請求書としての基準を満たせず、事業者のユーザーから都度発行依頼をいただく可能性がありました。
そのため、基準を満たせるように以下の変更をしました。
Before
After
- 領収日(実際に決済した日)を追加
- 内訳を税込金額の表示のみだったのを税率、税抜金額、消費税額をそれぞれ表示
- インボイス登録番号を追加
まとめ
インボイス制度の導入で、弊社でもいくつかの変更を行いました。
消費税の計算方法を見直したり、料金明細メールや領収書をアップデートし、お客様にとって使いやすいサービスに進化できたと思います。
この記事が今後インボイス対応するエンジニアの役に立ったら幸いです。
※サービスによっては、違うアプローチをしないといけない可能性もあるので、会社の法務担当への確認は絶対にしてください!!
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ホワイトプラスはリネットという宅配クリーニングのサービスを開発・運営している会社です。
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